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1 魚の鱗、鳥の翼 【2】

バスルームから先にあがっていた俊英は、裸のままダブルベッドの縁に座って、ショルダーバッグから何かを探していた。さりげなく目をやると、アニマ聖書冊子協会の冊子が見えた。

ショルダーバッグを探る手を俊英は止める。

「ららに会いに、新宿二丁目の店に行ったこともあるんだ」

ららはショーツを着け、二人掛けのソファに座った。スマホを手にしたが、すぐにテーブルに戻した。

「ホストクラブ?」

「いや、ショーパブだった」

六年前、背教を理由にアニマ聖書冊子協会を排斥され、梅川洋二の屋敷を出たららは、最初、新宿二丁目にあるゲイ相手のホストクラブで三年働いた。この間にららは金を貯め、豊胸手術とホルモン療法を行なった。身体をいじってからはショーパブで短い間働いた。だが、お酒を飲みながらの接客が苦手なららは、結局現在のニューハーフヘルスの仕事に落ち着いた。

「あなたは、まだアニマにいるの?」

ららの問いに俊英は頷いた。そして、「これ読まない?」と、ページの開いた冊子を差し出した。「僕の書いた聖書研究の記事」

冊子を受け取ったららは、とくに興味もないといった口ぶりで俊英に尋ねた。

「執筆部門にいるんだ?」

「いや……。使徒会議のメンバーに任命された」

「ほんと?」

ららは驚きを隠せない。

使徒会議は教団の意思決定機関で、会長のシン・ニコルに認められた極々少数の信者しかなることができない。そんな使徒会議のメンバーに宗田俊英が二十四歳という若さで選ばれたことは、アニマでも異例の出来事だった。

音は出さずにつけておいたテレビが、フクシマウイルスによる新たな死者を伝えるニュースを流した。それを横目で見ながら俊英はららに尋ねた。

「ところでららは、フクシマウイルスワクチンの接種はした?」

冊子をめくりながら、ららは答える。

「接種したよ。仕事が仕事だから、性病だけじゃなくて、いろんな感染症にも気を使うようにしてる」

(いま、そんな話はしたくない)

冊子を俊英に返してソファを離れたららは、テレビを消し、部屋の間接照明をさらに暗くした。BGMはピアノソロの演奏だけが流れるチャンネルを選択して、音量は小さく絞った。床にしゃがみ、店から支給されているトートバッグから、ローションとコンドーム、少し考えて赤い手枷を取り出す。

「これで遊んじゃおうかな。ゆるくしておくから。ちょっと力を入れれば、すぐに取れるようにしておくから」

手枷といっても、簡易な作りのおもちゃだった。ららの勤めているニューハーフヘルスではオプションでソフトSMが選択できるので、途中でプレイ内容を変更したくなった客のために、ららはいつもこれを持ち歩いていた。

ららは俊英の隣に座って自分の左手首に手枷をはめた。少し強く引っ張っただけで手枷が簡単に外れるところをららは俊英に見せ、彼にも確かめさせた。

「これ使ってもいいでしょう?」

ららの問いに俊英は曖昧に頷く。

俊英を後ろ手にして手枷をはめたららは、俊英の頬に手をやると、その頭を抱きかかえた。

「指、しゃぶって」

ららは俊英の口腔に人差し指を入れ、指をさらに喉の奥まで挿し入れた。俊英の口からは白濁した濃い唾液が糸を引いてこぼれた。

ベッドの上に立ちあがり、脚を開くとららは、突き出すように俊英の顔に股間を近づけた。ショーツの紐を外し、ららは、ゆっくりとペニスを露出した。

磨き上げられた形のよい乳房と美しく括れた腰とは対照的に、皮を被ったまま垂れ下がる黒ずんだ陰茎が禍々しい。

「くりち×ぽ、舐めて」

包皮を下ろしたららは、紅を帯びた亀頭を俊英の唇にあてた。

唾液をこぼしながら、俊英は潤んだ目でららを見上げる。ららのペニスは俊英の硬い唇に咥えられ、ずぶずぶに濡れた。

「ああ、いいっ……」

俊英は、口腔から唾液がこぼれるのを止めない。ペニスを咥えるときは、口腔に唾液をたっぷり留めておいたほうがららが悦ぶことを俊英は知っているからだ。唾液を垂らしながらさらに舌でららの亀頭を探る。

「あ、ああ……」

ららの女声はフェイクだ。とはいえ、ららの地声は女を感じさせる声色だと言われていた。さらに仕事で男たちとの性交を重ねているうち、プレイ中は、女声のほうが自然な反応になっていた。

「いいっ……」

俊英の頭を抱え込んで、ららは腰をゆっくり回した。ららのペニスは勃起し始めている。昂ぶる俊英の呼吸が、奇妙な速度でららの舌骨を撃った。

「はあっ、はっ……」

俊英の足元に移動してベッドに座ったららは、両足の指を使ってゆっくりと俊英の脚を開いた。黒々とした亀頭を剥き出しにした俊英のペニスは、陰茎の腹を見せながら逞しく起立している。

身体を前に進め、ららは互いの脚をからめる。そして、俊英の剥きだしになった亀頭と自分の亀頭を掌で包み込んだ。

「ねえ、見て。オチ×チンが合わさったとこ……」

俊英の硬く勃起したペニスは先走りで滑っている。ふたりの若竿を握る反対側の手のひらで、ららは二つの亀頭の先端を柔らかく撫でた。ららは俊英を責める。

「くりち×ぽ、欲しいって言って」

「くりち×ぽ、欲しい」

俊英が小さな声で答えた。

「ねえ、どこに欲しいの? 言って……。ケツマ×コに欲しいんでしょう?」

「欲しい……」

ほしいとも、ほしひ、とも聞こえる白痴の声で俊英は答える。

「聞こえない! そんな小さな声だと」

小さな声で求められても、ららの気持ちは昂ぶらない。ペニスの挿入を求めることは、恩寵を求める行為なのだ。自分を曝けださない人間に、ららは恩寵を与えない。

「もっとはっきり言って。僕のケツマ×コにクリチ×ポくださいって……」

手枷をかちゃかちゃさせながら上体を少しだけ起こした俊英は、ららと目を合わせると喉の奥から声をあげた。

「ケツマ×コにくりち×ぽください……」

ららは手元に置いておいたコンドームの袋を破って自分のペニスに着ける。いつもここでは少しだけ時間をかける。きちんと勃起しているところを客に見せなければならない。

あぐらに座り直したららは、タオルを被せた枕を俊英の尻の下に敷いた。俊英の両膝を自分の肩にのせて太腿を抱く。手のひらにたっぷりとローションを垂らして俊英のアナルに塗り、亀頭をあてがう。太腿をさらに深く抱いて引き寄せ、ペニスを根元まで一気に挿入した。

「痛くない?」

ららは俊英に尋ねた。アナルセックスは痛いと快感に繋がらない。


つづく



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