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1 魚の鱗、鳥の翼 【1】

渋谷


1 魚の鱗、鳥の翼


受付の電話で客は、「田村ららの中学のときの同級生なのだが、ららを指名してもかまわないか?」と、聞いたらしい。客が告げた名前は、ソウダ――本名なら、宗田俊英?

まあいい……。

とはいえ、ほんとうに俊英だとしたら、中学の同級生だったなんて言わなければいいのに。帰ったら店の子たちにからかわれる。

ところで、髪、めちゃめちゃ。前髪が鬱陶しい。雨だと疲れる。髪をなんとかしたいけど、公衆トイレは使いたくない。わたしが男だと気づく女もいて、豚に嫌な顔されるのはつらい。雨、疲れない?

渋谷駅ハチ公口前のQ's EYEには、空気中の放射性物資の濃度が都内でも急激に上昇していると表示されていた。ツイッターで拡散希望のあった、福島第一原発2号機で再臨界という情報は、ほんとうだったのかもしれない。

Q's EYEのニュースが変わった。フクシマウイルスによる新たな死者2名――。

俊英がわたしに会いたいと思ったのは、やはりこのこと……。でも、まさか。

スクランブル交差点に入って行くと、斜め前にいた女の傘に目尻を弾かれた。左折しようとしていたタクシーが人波につかまり、人の流れが阻害されている。道玄坂からくる人の流れを水の流れとして意識しようと思う。傘のビニールを叩く雨が、骨灰色の流れに落ちて行く。

       *

「お尻きれいにするから、向こうむいて」

シャワーをカランに切り替え、宗田俊英の腹を撫でながら、田村ららは跪く。

(六年前の俊英はもっと背が高かったような気がする)

引き締まった尻に触れて誘導すると、俊英は身体を反転させて脚を軽く開いた。俊英の陰毛はアナルも含めて綺麗に剃られていた。

(男とはしてないのかな……)

ららがそう思ったのは、俊英のアナルが固く閉じられているのを見たからだ。パートナーがいて使い込まれている男のアナルは、密壺が少しだけ開いた形になる。ららは指先で俊英のアナルを軽く広げ、エネマシリンジの挿入口を俊英のアナルに差し込んだ。

「六十数えたら、排泄して」

ららは、桶にためた湯を俊英に注ぎ込む。宗田俊英の尻が緩慢に傾いだ。

「浣腸は必要なこと?」

俊英が選んだ「90分VIPコース・デリバリー」には、客のアナルにららがペニスを挿入する逆アナルプレイが含まれている。逆アナルプレイの前には、浣腸することが決まりだ。

湯を注入しながら、ららは立ち上がって聞き返した。

「逆アナルは、なしにする? わたしにされているときに、うんちの臭いがするのは嫌でしょう?」

らら自身は、糞便そのものの臭いは嫌いではなかった。苦手なのは、糞便とローションが混ざったときの臭いだ。

「ここで出すの?」

「そう、ここでして」
逆アナルを希望する客には、ららは必ず目の前で排便させるようにしていた。そうしないと浣腸しても糞便が残ったままにしてしまう客がいるからだ。

それに、どんな男でも誰かの目の前で排便するときは身体を縮めてしゃがむ。その姿は、ららにとって加虐の悦びを感じるものでもあった。

「高校生のときは、手続きが簡単だった」

「手だけだったからね」

(嘘。口も使った。それに、わたしのアソコも……)

あの頃の田村ららは、梅川洋二や伊丹蘭に強制される楽園実験の苦しさに喘いでいた。だから自分のペニスを俊英に触れさせ、ららは懇願したのだ。

こんなことはしないほうがいい――。あのとき俊英はそう言った。

でも、そう言いながらも、勃起したららのペニスから亀頭を剥き出しにして、俊英はららのペニスを口唇で咥えてくれた。

(魚には鱗や鰭にも味蕾があって、身体で味覚を楽しむことができる。わたしも、そんなふうに全身で記憶を楽しめたらいいのに)

「出していい?」

そう聞かれたららは、身体をかがめて俊英の尻を覗き込む。アナルは小さく伸縮を繰り返しながら、てらてらとした黄色い汁を漏らしていた。

「もう少し待って……。ねえ、ちゃんと六十数えたの?」

俊英のアナルに人差し指を入れて、ゆっくりとららが掻き混ぜる。

「がまんできない」

俊英の言葉に耳を貸さず、ららは指先をさらにアナルの奥へ挿し入れる。

「まだだめ……。まだ……。まだ……」

もぞもぞと蠢いていた俊英の尻が、ららの指をきつく締めた。

「いいよ」

俊英は急いでしゃがみこむと爪先立ちになり、シャーという湿った音を立てて排便した。軽く勃起しているペニスを下向きに押さえて小便もこぼしている。

排便を終えるとため息をつき、俊英は立ち上がった。

俊英の尻とバスルームの床に残る糞便を、ららはシャワーで丁寧に洗い流した。ふと、ららは、最近覚えたばかりの歌を口ずさんだ。

人はかつて鳥だったが、翼を失って空を飛べなくなった。でも、失った翼の代わりに腕を得た。その腕で人は人を抱きしめることができるようになった――そんな、歌。


つづく


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