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1 フクシマウイルス 【1】

リビング 梅川



1 フクシマウイルス


梅川洋二の屋敷に行くように蘭から優羽が指示されたのは、30℃を超える真夏日が続いていた九月最初の土曜日、アダルトチャットの配信が終わった後だった。

梅川の屋敷は、優羽の住む「松濤フラワーマンション」から近く、歩いてもいける距離にある。

駐車場に停められた二台のメルセデスと、クラシカルなポルシェ911を横目に見ながら優羽は、門に備え付けられたインターフォンを鳴らす。返事をした男に名前を告げると、着崩れた甚平姿の男が現れた。トキタだった。

「早かったな」

門を開けてトキタが優羽を屋敷へ通した。トキタは、たばこの煙と業務用の芳香剤が混ざった臭いのする男だった。

トキタの後について敷石を渡り、優羽は屋敷のなかに入って行く。

「そこに座ってろ」

前歯の欠けた口を開けてニヤッと笑ったトキタは、ぞんざいな足音を響かせてリビングを出て行った。

優羽は四人掛けのソファの端に座る。

優羽が案内された一階のリビングは吹き抜けになっていて、二階の壁面から外光を取り入れる造りになっていた。壁面上部には、建物が福音教会だったときのステンドグラスが残っている。だが、テーブルやソファをはじめ調度品のすべてを梅川はグレーの物に変えていた。だから、木造の古い天井や床、壁と相まって、優羽はこのリビングに重苦しいものを感じていた。

しばらくすると、腹にバスタオルを巻いた梅川が姿を見せた。右手には鎖を握っている。

少し遅れて、全裸の少女が姿を見せた。梅川の持っていた鎖は、少女が嵌めている赤い首輪に繋がっていた。思わず優羽は立ち上がった。

「彩翔!」

彩翔は、うつむいて優羽から視線を逸らした。長い黒髪が揺れる。眉根をしかめた優羽は立ったまま梅川に聞いた。

「彩翔が、どうして?」

梅川は、皺の刻まれた表情を醜く崩すと、挨拶もなく優羽の唇を撫でた。

「伊丹兄弟。あなたは、いつ見ても美しい……」

梅川の指先を振りほどき、少女のような顔を歪めた優羽が問い質した。

「どういうことか、説明してください」

「この子はね、わたしが教育にするようにと、シン・ニコル会長から預かったのです。ですからわたしは、アニマ神への奉仕を立派に務めることができるようにこの子には『奉仕の羊』の特権も与えました。伊丹兄弟。あなたが、シン・ニコル会長から同じ特権を与えられたようにね」

梅川は慇懃に話しかけると彩翔に繋がった鎖を引いた。つんのめるように彩翔は前に出る。手を伸ばしてテーブルに置いてあった空の湯呑茶碗を取ると梅川は、それを優羽の前に置いた。

「お客様が見えたら、お茶をお出しするんだったね、彩翔?」

姿勢を立て直した彩翔は「はい」と返事をすると、薄い乳房と剥き出しの股間を隠そうとするように両腕をすぼめた。

「早く、お茶をお入れしなさい」

カタカタとテーブルを鳴らしながら、屈むような姿勢で彩翔はテーブルの天板に乗った。そして、股間を開いて湯呑をあてた。

「彩翔、止めて!」

優羽の制止を聞かずに彩翔は、ううッと軽く嘔吐くと○尿を始めた。手の震えを抑えられない彩翔の尿汁はほとんど湯呑へは注がれず、バシャバシャとテーブルを盛大に弾いて優羽のTシャツに飛び散った。テーブルからこぼれた尿汁は床を伝い、素足だった優羽と梅川の足元を濡らした。

優羽は腰を屈めてテーブルの上の彩翔を覆い隠すように抱いた。

排尿を終えた彩翔は、しゃがんだ姿勢のまま湯呑みを置くと、優羽に、「どうぞ」と言った。

優羽は、彩翔の耳元で「帰ろう」と、ささやく。

彩翔は優羽の言葉に小さく首を振った。

「どうして?」と問いかけた優羽に、子供が親にするような媚びた表情で梅川の顔色を窺った彩翔は、「アニマ神に献身するためです」と答えた。

「素晴らしい信仰だ、彩翔」そう言うと梅川は少女の鎖を強く引いた。「それにしてもずいぶん、そそうしたね。床がびしょびしょじゃないか。これを綺麗にしないといけないね」

梅川に鎖を引かれテーブルから降りた彩翔は、床に這いつくばると、自らの尿汁に口をつけて啜ろうとした。優羽は、彩翔の上半身にしがみつくように抱きついて床から引き離した。梅川は薄ら笑いを浮かべながら優羽の肩に手を置いた。

「この子はね、あなたのアダルトチャット配信を観たことがあるんです。実の母親とさえ性交することを厭わない伊丹兄弟の立派な信仰を見て、彩翔は霊的に非常に大きな進歩を遂げました」

梅川が真性のサディストであることを、優羽は子どもの頃から知っていた。それと同時に、バイセクシャルであることも。優羽自身も、梅川の性癖の犠牲者の一人だったからだ。刺すような嫌悪が胸に湧き上るのを優羽は感じる。

「わたしが、あなたのために精一杯、尽くします。だから彩翔には、こんなことはさせないでください」

「木谷美織がね、伊丹兄弟」

優羽の言葉をはぐらかすようにそう言うと梅川は、ソファに座って膝を二度叩いた。

「木谷姉妹がどうかしたんですか?」

梅川がなにを言おうとしているのか、優羽にはわからなかった。


(つづく)


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